平成32年4月開校予定の「にじの丘学園」に統合される7つの小学校と中学校の後世にも引き継ぎたいよき伝統と特色をお伝えしたいと思います。今回は道泉小学校についてです。
道泉小学校は、大正15年に愛知県東春日井郡瀬戸道泉尋常小学校として創立され、やきものの街「瀬戸」の中心部に位置し、「せともの」に深くふれあうことのできる地区にあります。学校創立に当たっては、地元住民が学校用地を寄付し、その整地作業を住民総出の手作業で取り組むなど、地元民の熱い想いにより学校建設がなされました。
「ベストをつくす・チームワークをとる・ルールを守る」を校訓として、心身共に健康で活力あふれる児童の育成を柱に教育の推進を図りながら、近年は、「チームどうせん」を合言葉に、学校・保護者・地域が支えあう教育活動に取り組んでいます。令和2年4月には、本校を含め瀬戸市中心部の7小中学校が統合され、小中一貫校「にじの丘学園」が開校します。新しい教育が始まることで、道泉小学校は94年の歴史を閉じることになりますが、道のほとりに湧き出る泉から名づけられた地名からとった校名と、日々道の泉(みちのいずみ)を汲みとるという深い教育的な意味は、将来にわたり語り継がれることを願っています。
<郷土愛を育てる=どうせん学級>
毎年6月の「どうせん学級(親子学級)」では、「せともの」の文化や地域に古くからに伝わっていることを親子で体験し、子どもたちに郷土愛を育てる活動が行われます。そして、6年間を通して「せとっ子」を育てる時間になっています。また、どうせん学級の講師には、毎年、地元の方々にお願いしており、地域の方々との交流の時間にもなっています。
【おもな活動内容と講師の皆様】
・1年生「転写絵付け」 講師:高松園製陶所 髙島様
・2年生「おこしものづくり」 講師:道泉地域交流センター 松井様他7名
・3年生「招き猫絵付け」 協力:祥文堂 加藤様
・4年生「陶板づくり」 講師:白萩窯 大島様
・5年生「瀬戸染め付け焼」 講師:丸窯製陶所 加藤様
・6年生「茶道」 講師:道泉寺 中島様
<いつまでも残しておきたい「岩野さんのサクランボ」>
校庭の片隅に、毎年実をつけるサクランボの木があります。子どもたちが収穫し全校児童でいただいています。このサクランボの木は、以前中日新聞にも紹介されました。統合後も、いつまでも道泉小学校の校庭に残しておきたいもののひとつです。
【サクランボを仏前に 】(中日新聞 H29.7.9 掲載より)
今から二十年ほど前、M先生が初任校として勤めた瀬戸市の道泉小学校での話。地域に開かれた学校で、多くの学区民が校庭の草取りなどをしてくれていた。その中で、特に熱心に花壇などの世話を毎日してくれる男性がいた。岩野只志さんだ。野球部顧問だったM先生は、土日も学校へ出掛けることがあり、その姿をしばしば見かけた。夏休み中の水やりは本当にありがたく、頭の下がる思いがしていた。
それから十年がたったある日の事。岩野さんが亡くなられたと耳にした。他校に異動しており知らなかったとはいえ、葬儀に出られなかったことが悔やまれた。岩野さんは校庭にサクランボの木を植え「実がなったら、子どもたちが喜ぶかな」と話していたと聞いた。くしくも亡くなった二ヶ月後、初めて実を付けた。道泉小学校の先生方が、岩野さんの仏前に供え「サクランボがなりましたよ」と報告したという。年月が過ぎ、三年前、M先生は再び道泉小に赴任した。サクランボの木は健在だったが、児童はもちろん教職員も入れ替わるので、誰が植えて世話をしていたのかを知る人はいなくなっていた。昨年も実を付けたものの、ほとんど野鳥に食べられてしまった。
今年は、ネットで防護して世話をした。おかげでたわわに実り、全校児童がおやつとして食べた。その時、M先生は校内放送で「岩野さんという方が…」とサクランボのいわれを説明した。すると、各教室に自然に拍手が沸き起こった。「今年もたーんと実を付けました。子どもたちも喜んでいます。岩野さんよかったですね」と、M先生は話す。