第50回記念日本彫刻会展覧会と瀬戸について
(公社)日本彫刻会 無審査会員 鈴木 紹陶武
昨年度は新型コロナウイルス感染拡大及び政府による緊急事態宣言発令に伴い、開催が延期された第50回記念日本彫刻会展覧会(通称日彫展)が、2021年4月18日(日)から5月2日(日)東京都美術館において、改めて第50回記念展として2年ぶりに開催されました。しかしながら、本年度も政府による緊急事態宣言の発令で東京都美術館が会期中の4月25日(日)より臨時休館となることに伴い、第50回記念日本彫刻会展覧会も残念ながら4月24日(土)で会期途中での中止となりました。
昨年より公での発表の場が無くなるなど、厳しい状況が続いている中で、日彫展の地方巡回展である、第50回記念日彫東海展は、2021年6月9日(水)より13日(日)愛知芸術文化センター愛知県美術館ギャラリー8階にて、感染症対策に注意しながらの開催予定となりました。そこで(公社)日本彫刻会について、瀬戸にゆかりがある作家について少しご紹介させて頂きたいと思います。
(公社)日本彫刻会について
(公社)日本彫刻会は、具象彫刻を中心に、多様な彫刻作品が展示される日本最大の彫刻研究団体です。(現在構成総員数319名)
日本彫刻会は、昭和22年 朝倉文夫・加藤顕清(窯神神社境内にある磁祖加藤民吉像の制作者、岐阜県出身)・本郷新らを中心として発足した美術団体「日本彫刻家連盟」として結成した。その後「日本彫塑家倶楽部」「日本彫塑会」と改称を経て、昭和45年に文部省より社団法人として認可され「社団法人日本彫塑会」となり、昭和55年に「社団法人日本彫刻会」へと改称。平成22年「公益社団法人日本彫刻会」として内閣総理大臣の認定を受け今に至っています。
昨年度は前身である「社団法人日本彫塑会」が、社団法人として認可されてから50年という節目の年を迎えました。日彫展は、作家精神の発表の場として(公社)日本彫刻会の活動の主軸と位置づけ運営されている展覧会であり、彫刻の公募展としては日本最大の展覧会です。
公募展として美術、文化の活性化を図ることに加え、立体芸術という平面芸術では担えない、視覚障がい者の方々への鑑賞支援「触れる彫刻鑑賞」を前身である「日本彫塑会」第15回記念日彫展(昭和42年)より行うなど、芸術の普及を目的とした社会貢献と共に公益に資する事業を展開している展覧会です。
日本の彫刻には、伝統的な仏像を中心とした典雅な彫刻文化が存在しました。明治維新以降は外来の技法も取り入れられ、和と洋が融合した日本近代彫刻が公募展などを中心に築かれてきました。
参考文献(公社)日本彫刻会ホームページ
瀬戸で見ることができる、瀬戸にゆかりがあり、過去に日彫会に在籍された作家の彫刻作品
加藤 顕清(かとう けんせい1894年12月19日- 1966年11月11日)日本芸術院会員、岐阜県出身。
窯神神社境内『磁祖加藤民吉像』1937年
瀬戸市美術館2階ロビー『孤独』1952年
長江 錄彌(ながえ ろくや1926年1月2日 - 2005年4月6日)日本芸術院会員。瀬戸市出身。
瀬戸市美術館ロビー『女像柱的型態』1958年
パルティ瀬戸ロータリー『芽』1964年
『砂丘』1990年
『乾漆作品の一』1965年
『希望』1981年
『思考』1986年
瀬戸蔵つばきホール『ロードスの印象』1978年
石田 武至(いしだ たけし1932年10月26日‐2016年9月7日)名古屋市出身。
瀬戸市美術館ロビー『十七才』1962年
瀬戸市美術館2階ロビー『舞台Ⅱ』2001年
亀谷 政代司(かめたに まさよし1952年‐)名古屋市出身、瀬戸市在住。瀬戸市文化協会会長。
瀬戸市美術館2階ロビー『夢―もう一杯』1985
瀬戸市美術館ロビー『ミネルヴァの降臨』2000年
瀬戸商工会議所『祥風(風の起源)』1997年
瀬戸蔵『ダフネ』2005年
この他にも瀬戸市内の小学校はじめ、(公社)日本彫刻会に在籍された作家の作品や(公社)日本彫刻会以外で活躍する作家の彫刻作品も含めると、瀬戸市内に多くの彫刻作品が存在します。これは、瀬戸の粘土が可塑性に優れた粘土であり、彫刻の中でも彫塑、塑像を制作するのに適した素材であったことが大きな理由として考えられます。現在においても全国の芸大、美大において瀬戸の木節粘土が塑造において使用されているケースが少なからずあります。
瀬戸とあまり関係が無いように思われる彫刻も意外と瀬戸と繋がりがあり、気づいていないだけで、身近に彫刻作品があることに気づいて頂けたと思います。これを機会に彫刻に興味を持って頂き、展覧会をご高覧賜ればと存じます。
日彫展の地方巡回展である、第50回記念日彫東海展は、2021年6月9日(水)より13日(日)愛知芸術文化センター愛知県美術館ギャラリー8階にて、感染症対策に注意しながら開催予定です。
主催:東海日彫会 共催:(公社)日本彫刻会・中日新聞社・東海テレビ放送 後援:愛知県・三重県・愛知県教育委員会・三重県教育委員会・岐阜県教育委員会・名古屋市教育委員会
一般500円、高大生300円、中学生以下無料
※今回の展示に上記の先生方の作品は展示されておりません。
鈴木 紹陶武(すずき つとむ1979年‐)瀬戸市出身。瀬戸市在住。
『塔の上のシンガプーラ』2021年 第50回記念日彫東海展出品作品 文部科学大臣賞受賞
H×211cmW×108cmD×58cm 素材:木・FRP