2016/06/30
瀬戸陶芸協会会長 加藤令吉
本年瀬戸陶芸協会は創立80周年を迎え記念展を開催する運びとなりました。当協会は昭和11年(1936)6月に当時あったいくつかの作家の会派を超え、思いを結集した「瀬戸陶芸協会」を設立しました。現在でも50余名の会員を有し、作品発表や研究会等の事業を活発に開花しており、瀬戸を代表する陶芸団体として活動しています。
このように80年の歴史を有する陶芸団体は世界的に見ても瀬戸陶芸協会だけといえます。つまり、日本各地にある陶業地においても最古の陶芸団体です。そして特筆すべきは、それ以前の研究団体が22年前に存在していた事を考えれば100年余の歴史を数える訳です。その頃から、豊富な窯業資源を有する瀬戸は、産業的なやきもの作りだけではなく、創意工夫をされた創作陶芸に眼を向けていた事が良く分かります。これはこの特別展覧会を鑑賞して頂く事によってその時代、時代の背景における研鑚の様子が良く理解出来ます。
そして、造形から図案に至る迄、いわゆる町工場で作られてきた量産品ではない「個性」を重視した作品群が創り出されてきます。それらの作品は、フランス・パリにおける万博博覧会(1876・1900)に出品される等、海外にも多く発表の場を求めています。そして昭和21年(1946)日本美術展覧会(日展)において加藤華仙が瀬戸で初の特選を受賞し、後の「日展王国瀬戸」を作る礎となりました。
その後は、鈴木青々、加藤舜陶、河本五郎、加藤 釥等が、日展を舞台に活躍し瀬戸の陶芸の隆盛が続きました。その後、日展だけではなく、日本伝統工芸展に挑戦する作家が登場したり、無所属でオブジェ等の作品が国内外で認められる作家が生まれたり、瀬戸の現代陶芸界は多様な様相を示してきました。

【加藤令吉 「標Ⅱ」 2016年作】

【太田公典 「岩絡文面取鉢」 2015年作】

【滝川幸志 「彩陶 方形の記憶」 2015年作】

【宮地生成 「釉彩花器」 2015年作】
創立80周年を迎えるにあたり、私達は瀬戸陶芸の多くの歴史を学びました。そして今後大きく変化する時代のなかで、伝統ある瀬戸の陶芸を発展させていくため、さらなる精進を重ねなければなりません。「温故知新」は良く使われる言葉ですが、この言葉の重みをしっかりと受けとめて瀬戸陶芸協会は新しい一歩を歩み始めました。
この「瀬戸陶芸の歩みと瀬戸陶芸協会の今」展は、次の三つの会場で展示されます。
瀬戸市美術館
平成28年6月4日(土)~7月31日(日)

【展示場内】

【展示場内】
東海東京フィナンシャルギャラリー・日本橋
平成28年9月21日~(水)10月7日(金)
名古屋古川美術館分館鷹三郎記念館
平成28年10月29日(土)~12月18日(日)
皆様には是非ご来場頂き瀬戸陶芸の今を鑑賞頂きたいと願います。そしてこれからの90周年、100周年を迎える瀬戸陶芸の未来を期待して下さい。