瀬戸の鉱山のあれこれ
山甚大学鉱山株式会社 加藤真弘
当社は、私で4代目になるのですが、名刺交換などをすると、「変わった社名だね。」とか、「社名の由来は?」などとよく聞かれることがあります。
みなさんは、この瀬戸市に東京大学があるのをご存知でしょうか。正式名称は、「東京大学大学院農学生命科学研究科付属演習林生態水文学研究所」と言うそうです。この設置の経緯は、この地方は、窯業の一大生産地であり、陶器窯の燃料に多量の薪が必要であった為、山は見渡す限りハゲ山で河川への土砂流出がみられ、下流の水害が深刻であったので治水・砂防の為、大正時代に設置されたそうです。この地方では、多くの方が東大演習林と言ったほうが、馴染みあると思います。
私どもの鉱山名である山甚大学鉱山株式会社も、この東京大学演習林に由来しているそうです。元々、この東大演習林で採掘される粘土が良質な粘土であったので、東大演習林の粘土が今でいう一種のブランドであり、その名に由来した会社などが当時在ったそうです。現在では、東京大学名に由来した鉱山は、当社の山甚大学鉱山しか操業致しておりませんが、○○大学鉱山という社名は、昭和の三、四十年代には、数社在ったと聞いております。
写真をご覧いただくと採掘場の様子がよくわかります。
現在は大型重機で行う作業を、大正時代は、鉱員はハット・トレンチコートなどを着て正装し、馬とトロッコで粘土を搬出していました。
当社を含め、瀬戸の多くの鉱山で採掘している原料は、主に2種類あります。それは、陶器とガラスの原料です。瀬戸の代名詞である「セトモノ」の陶器は、ほとんどの方が原料は粘土であると容易に想像がつくと思います。しかし、「ガラス」の原料は何からできているかご存知でしょうか?それは、珪砂という特殊な「砂」からできています。簡単に説明すると、この珪砂を精製し、その後高温(1700度以上)でドロドロに溶かし、必要な形に成型するとガラスになります。
このガラスの原料の珪砂のこの地域の生産量は、実は全国一なんです。最近の全国シェアは40%前後ですが、最盛期の昭和40年代では、70%前後あったそうです。瀬戸と言えば「セトモノ」があまりにも有名ですが、瀬戸の珪砂も日本国内におけるシェアは、かなり高く、資源の少ない日本の中である程度、国内でまかなえる原料であるといえます。