深川神社 特別講話第20回
「おことのお話と演奏」に参加させていただいて
創和会 会主 加藤 創子
10月8日、朝から降り続いていた雨に、今日は一日こんなお天気かも、と覚悟を決めて深川神社境内に車を乗り入れた時、雨があがり薄日が差してきました。今回の演奏会は陶彦社拝殿で行われます。演奏者には屋根がありますが、聴いていただくお客様は屋外となり、何としても晴れてほしかったのです。
どうかこのまま雨が降りませんように、と早速の神頼み。
ほどなく京都から私の師匠や同門の二人も到着し、二宮宮司様からお祓いを受け拝殿に上がらせていただきました。楽器の準備をしているうちにも参拝者の柏手を打つ音、投げ入れられるお賽銭の音、風にそよぐ木々、小鳥のさえずり・・・。特別な空間に身を置いていることを実感し、気持ちが張りつめます。
心配した雨も何とか持ちこたえ定刻通りに会は始まりました。屋外での演奏は通常音が散るのでそのつもりでいましたら、拝殿は大変音響が良く、相手の音が近からず遠からずホールとは違う奥行き感があって、神聖な空間に向かって演奏しているという厳かな気分になります。これは、ここで演奏を許された人だけが味わえることだと思うと、ありがたさがこみあげてきました。
ふとこれと似た感じを思い出しました。
実は、平成15年にご縁をいただいた原山小学校でのお筝教室を皮切りに、幡山中学校や瀬戸市文化協会主催で夏休みの子供たちを対象とした文化体験講座で、筝曲の美しさや楽しさを伝え続けております。小中学校でお筝を教えている時に、筝曲の代表作『六段の調べ』のさわりの部分を弾いてみせます。すると、それまでざわざわ、ごそごそしていた児童生徒たちがたちまち静かになり、身じろぎもせず耳を澄ませてくれるのです。この子達の吸い込まれそうになる瞳の先で演奏している時にも、やはり神聖な気分になります。それと同時に、日本の伝統芸能の良さを次代を担う子供たちに伝えていると感じるうれしい瞬間です。
今回は 『嵯峨の秋』 『みだれ』 『千鳥の曲』 『新娘道成寺』 の4曲を、解説も交え演奏致しました。筝曲の代表的な曲が続いたのは、お客様にはフルコースを食べたようなもので満腹感があったことでしょうから、最後にデザート的に秋にちなみ「虫のこえ」など童謡を演奏させていただき、皆さんにも口ずさんでいただきました。
演奏中雨が降らなかったのは神様のご加護、きっと陶彦社の御祭神 陶祖 藤四郎様もお悦びいただけたからでしょう。清々しいご神前で貴重な体験をさせていただきありがとうございました。