スタッフM 浅井茂信
あれは、其処比処に春の兆しを垣間見るころでした。 私、浅井茂信六十五才実務四十三年名古屋市在住は、瓦屋根葺を生業としています。このたび地元の(有)野中建築工業所様のご依頼により、昨秋の台風により破損した深川神社の手水舎の屋根瓦工事をすることとなりました。
私事ですが、愛知県屋根瓦葺技工組合の組合員で、組合の活動の一環として毎年吹上ホールにて行う愛知技能プラザにて瓦屋根の宣伝、相談、子どもたちには瓦割、瓦葺体験などの活動を行っています。
さて、屋根瓦工事のあらましは、次の通りです。
まず瓦を一旦下におろします。それから大量の瓦土をおろします。
この時、野地板と垂木三本が腐っていました。原因は雨洩れが三カ所ほどあったことです。工事をした先人は、かなり手間暇をかけて仕事をしたと思います。私などは到底かないません。そこで野地板をすべてはがし、垂木三本を替えました。この屋根には野地板の上にトントンという杉板を薄くはがしたものが葺かれていました。このたびは、屋根の荷重を軽減するため防水紙を張り、その上にひばの桟木(さんぎ:30×40)を打ち、平部については引掛け石砂利土葺きを採用しました。
また雨洩りの原因は、瓦と瓦の間を開けすぎていたのです。普通は最大一寸ぐらいですが、ここは二寸五分ほど開けてありました。そこで、私は十七列の瓦を十八列にして堅く葺きました。次に棟工事では土ではなく、吸水率の低いモルタルなんばんを使用しました。降り棟の鬼瓦の位置は、流れ寸法の1/5にする考え方と隅の延長線上に据える考え方があります。この屋根はこの考え方より前に据えてありましたので少し上げました。
最後に未熟な私が歴史ある深川神社の工事に携わることが出来て嬉しく思います。これからも倦まず弛まず仕事をしようと思います。拙い文章ですがどうぞお酌みとりください。
<付 記>
屋根を軽くする為、現在の瓦の殆どが爪があり、桟木の下地に引っかかるようになっていて、その瓦を桟木に引っかけて、釘で留める工法に変わっています。しかし、今回の葺き替えでは既設の瓦を使用したため、瓦には爪がありませんでした。また、屋根を軽くする為に下地に桟木を打ち、瓦には穴を開けてビス止めと併用して一部土を乗せて瓦を葺いています。土は既設の土に現在出回っている規制品の土(細かい砂利も含んでいます) を混ぜたものです。
<葺き替え工事様子>