せともの祭のシンボル『せともの人形』
瀬戸陶磁器卸商業組合 副理事長 松本 哲也
せともの祭の歴史
「せともの祭」の名称は、昭和7年(1932年)に加藤民吉翁の遺徳をしのぶ祭礼に合わせて陶磁器の廉売市が行われるようになり使われ始めました。当時は世界恐慌の最中で、不況にあえいでいた瀬戸の窮状を救うために在庫の山を整理することが目的であったとされています。以来、今日まで戦争により中止になった昭和19年、20年を除いて毎年開催されてきました。本来ならば今年で第89回を迎えるはずでしたが、コロナ禍の中で開催中止となりました。
せともの人形について
せともの人形は、昭和7年の初回からせともの祭のシンボルとして制作展示されています。せともので作成された人形は全国的にも珍しく、昭和55年ごろまでは瀬戸川沿いの廉売市会場内に小屋を設置して4~7か所に展示していました。その後は1か所での展示になって現在に至っています。登場人物はその時々の世情、映画、テレビドラマの主人公などを取り上げてきました。
昭和42年「ウルトラマン」
平成4年「織田信長」
令和1年「藤娘」
これまで、せともの人形の制作は、高浜市無形文化財 菊人形師 神谷重明氏(高浜市在住)に依頼してきました。神谷重明氏には、昭和27年からせともの人形の制作に携わってもらっています。始めは先代の神谷氏の師匠について参加したとのことです。それ以前は神谷氏の先代が中心になって作成していたようです。昭和55年ごろまでは市内5から7か所に展示したため瀬戸に寝泊まりして数名で作成に当たったとのことです。
本年は、新型コロナウイルスの早期退散を祈願して「アマビエ」を制作していただきました。残念ながら御高齢により本年が最後のせともの人形の制作になります。この作品は、深川神社に奉納し、9月5日(土)午前10時より新型コロナウイルス終息祈願をしていただき、9月27日(日)まで境内に展示させていただきますので是非ともご覧ください。また、「2020WEBせともの祭陶器市」も開催いたしますので、新しい形の「せともの祭」をお楽しみいただければ幸いです。
アマビエ制作風景
アマビエとは
アマビエは、江戸時代の弘化3年(1846年)、肥後国(熊本県)の海に現れた半人半魚の妖怪で、「疫病が流行したら自分の姿を描いて人々に見せよ」と告げて海中に消えたとされています。新型コロナウイルス感染の拡大に伴って、その姿を見ることによって疫病退散や流行病の沈静化を図りたいとして、にわかに注目を集めています。
「肥後国海中の怪(アマビエの図)」京都大学附属図書館蔵