蝶の姿が苦手な方には、ちょっと申し訳ない画像ですが、4月24日に誤って落としてしまった蛹が孵りました。
10月末頃だったと思います。社務所の入り口のドアの横にアオスジアゲハの蛹を発見。
どうしてこんなに目につきやすく、しかも粗相して落とされてしまいそうな場所で蛹なったのか、虫の心は分かりませんが、発見後は毎日掃除をするたびに雑巾で叩き落さないように気を付けていました。
ところが、「あっ!!」と大声を出してしまいましたが、時すでに遅く蛹を固定している繊細な二本の糸は雑巾によりプッツリと切れ、蛹は下に転がってしまいました。申し訳ない気持ちでいっぱいでした。拾い上げて外のカウンターの植木鉢の端に置き、何とか生き残って蝶になってほしいと願いつつ毎日見守ってきました。
境内ではアオスジアゲハの蛹はよく見かけます。しかし、いつの間にか無くなっていたり、蛹の色が緑から茶色に変わり、遂にはかすかすの状態になっていたり、寄生された形跡があったりと成虫になるまでの道のりはなかなか険しいと思っていました。
ですから、今回のように命綱がぶち切られ、人の手によって場所を移動させられた蛹の運命は、あまりに儚く成虫になることは難しいと思っていました。一方で、厳しい寒さの冬を越しても蛹の色が良く、まだちゃんとした生命体であると主張している感じを受けていましたから、ひょっとしたら孵るかもと淡い期待も寄せました。でも、まさか目の前で羽化する姿を見せてくれるとは、、、、
朝ふと見ると蛹が「ぶるっ」と身震いするではありませんか。すると数分もせず蛹の頭が割れて、もぞもぞとした黒い頭が見え始めました。でも、蛹が固定されていないので不安定そうです。そこで、鉛筆の先で蛹を支えるお手伝いをさせていただきました。五分も経ったでしょうか、最初は黒いだけの虫に見えたので、アオスジアゲハではない他の蝶か、もしかして寄生した蝶以外の虫ではないかと疑ってかかりましたが、あのエメラルドグリーンの翅を三分の一位の大きさに折りたたんだ状態でするするっと出てきました。
その姿を見て、今度は、この子はせっかく出てきたけど奇形だったのかと心配になりました。
半日ぐらいすると立派な翅をして蝶になりました。翅を乾かして飛び立つ準備をしているようですが、残念ながら風も強くあいにくの土砂降り。それでも、一度は飛び立とうして下に落ちたので、職員が救い上げ元の場所に戻しました。日も暮れてきたし悪天候で諦めたのか動く様子もないので、雨風を凌げるように周りを囲い、一晩無事にと祈りつつ蝶を残して帰りました。
翌朝は晴天。同じ場所にじっとしていました。
飛ぶ様子はなく、翅が奇形でやっぱり飛べないのかと心配していましたが、10時頃だったでしょうか、気付いたらその場所にはもう姿はありませんでした。
その日は、保護した個体よりも一回り大きいアオスジアゲハが元気良く飛び回る様子も見かけました。きっとあの子も同じように気持ちよく飛び回っていることだろうと思いました。
生命の誕生は、たとえ小さな蛹でも大きな感動を与えてくれると、命の素晴らしさを改めに感じさせてくれる出来事でした。
主のいなくなった蛹の殻