「おかず」ってご存知ですか
たいへん久しぶりに見ました。この写真の紅白のお菓子は、「おかず」と言います。
瀬戸では、昔から赤ちゃんが生まれてから百十日(ひゃくとおか)たって神社にご祈祷を受けにいらしたものです。今でも「百十日をお願いします」と受付で言われる方が多いです。
その百十日のときに神様にお供えするのが「おかず」です。
久々の「おかず」があまりに嬉しかったので、この写真の「おかず」を作られた宝屋清鶴さんに尋ねたところ、宝屋さんも何年かぶりに注文をいただいた、とたいそう喜んでいらっしゃいました。原材料は、米粉(国産)と砂糖のみだそうです。それを百十個(紅白各55個ずつ)用意します。家族の小規模化が進む今はさすがに百十用意される方は少なくなっているようですが、めでたいお祝いの品ですから、宝屋さんも数量は相談にのっていらっしゃるそうです。赤ちゃんのほっぺみたいな柔らかさ、ぷにゅぷにゅ感と真ん中をくぼませるのが特徴です。このくぼみは、かわいい「えくぼ」を表します。もちろん、昔は家庭で手作りをされることもありました。
「おかず」はお供えするだけでなく、親戚や近所、そして、ここが他地域の方にはちょっと珍しいようですが、神社に居合わせた参拝者にお配りするのが習慣です。これは「これから氏子の仲間入りをするので、どうぞよろしくお願いします」という意味があります。今でもこのお祝菓子をふるまう習慣は受け継がれていて、紅白饅頭やお菓子を皆さんに配る方は結構いらっしゃいます。
最近は瀬戸へ越してきた方がいらしたり、他の地域からお参りにお越しになったりするので、一般的に言われている三十日前後でのお参りも多くなっています。ところが、瀬戸では三十三日は、「坂参り」と言って境内に上がらずに階段の下でお参りをする習慣でした。その時には、お神酒、お米、塩を懐紙で御ひねりにしたものを階段にお供えとして置いてお参りだけして帰っていかれました。今ではほとんど見なくなりましたが、本当に極めて稀に階段にお供えされているのを見かけると「あっ、まだこの習慣を知っている方がいらっしゃるんだな」と、とても嬉しくなります。
境内に上がらない理由には、産後は穢れているという意味もあったのでしょうが、百十日、つまり、ほぼ三カ月もすれば出産されたお母さんの体調も回復し、赤ちゃんも首が座ってきて安定してきます。理に叶っているのも事実でしょう。
いずれにせよ、赤ちゃんの健やかな成長を祈る気持ちに変わりはありません。少子化が進む現代だからこそ、一人一人のお子様の生命を大切に慈しんでお祝いをしてあげたいものです。そして、その子にとっては一生に一度の初宮詣、心を込めてご祈祷をご奉仕したいと新年にあたり気持ち新たに思います。